大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和30年(れ)5号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

弁護人徳岡一男の上告趣意第一点について、

先ず本件につき公訴の提起があったかどうかについて按ずるに、記録中に存する井出廉三(当時水戸地方検察庁土浦支部検事)作成の証明書、水戸地方検察庁土浦支部の刑事事件簿写、東京高等検察庁の刑事控訴事件簿写、領置票写、検察票写、第一審判決謄本、保釈決定謄本、東京拘置所の収容者身分帳簿写、釈放指揮書写、押送指揮書写、勾留状写等の記載によれば、昭和二三年六月二六日水戸地方検察庁土浦支部検事井出廉三は水戸地方裁判所土浦支部に対し被告人の本件傷害致死事件について適法に公訴の提起をしたことを窺うに足る。従って、この点に関する弁護人の上告理由は採用できない。

しかし、原審において、法律に従い判決裁判所を構成したかどうか等旧刑訴四一〇条一号乃至一八号及び同条二〇号二一号等の事由があったかどうかについては、第一審及び原審における公判調書その他の訴訟記録がすべて紛失し証明の方法がないのみならずその他に原審の訴訟手続が適法になされたことを確証するに足る証拠もないから結局原審においては前記各号に掲げられた上告理由があるものといわなければならない。

よって爾余の上告理由の当否について判断するまでもなく、原判決を破棄すべきものとし刑訴施行法二条旧刑訴四四七条、四四八条ノ二に従い主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例